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おしゃべり散歩道2001

常に限界に挑むQチャン

 ベルリンマラソンで世界記録を達成したQチャン(高橋尚子)。彼女の驚異的な強さは、ベルリンの、街の人、ジャーナリストたちをもあぜんとさせました。また、彼女の謙虚な性格が彼らに深く愛されたのでした。
 レース後の記者会見でのこと。Qチャンがアニメ「風娘(かぜっこ)」の主人公になっていることを知った大会主催者の一人が、「風娘タカハシが、ベルリンでは台風の目となった」とたたえました。するとQチャンはすかさず、「でもベルリンの風は沿道の優しい声援をわたしに届けてくれたので、やはり台風ではなく、かぜっこでした」とニッコリ。
 会場内は大きくうなずく者あり、拍手する者あり。誰もが「頭の回転が速い選手だ!」という顔をしていたので、わたしは誇らしい気持ちになりました。
 それにしても、金メダルと世界最高記録という二つの偉業を成し遂げたQチャン。「ものが違うよ!」と小出義雄監督は常々話します。では、どこが違うのでしょうか? あらためて考えてみると、Qチャンはただただ「自分の限界に挑みたい人なんだ」と思えるのです。
 今回、レースの前まで彼女は一言も「世界最高を出したい」とは言わず、「自分のスピードの限界に挑戦したい」と。共にこのレースに参加した「ロールペさん(元世界記録保持者)に負けても、自分の新しい記録が出せればいい」と話したときには驚きました。
 その結果、世界最高記録と優勝がついてきたのです。Qチャンが、最大の目標を「世界のトップになること」を考える選手だったら、オリンピックの金メダリストになった時点で止まっていたでしょう。
 レース後、「ラスト2キロの失速が課題です」と話した彼女。(その時点では)一週間後のシカゴマラソンを走りたい様子でした。そのシカゴマラソンで世界最高記録は塗り替えられましたが、自分にチャレンジし続け、そこに喜びを感じるQチャンなので、これからも世界最高記録を淡々と、塗り替えていくことでしょう。

(共同通信)

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