増田明美のホームページ ビデオメッセージへ各種お問い合わせへトップページへ

TOP > おしゃべり散歩道 > 2001年目次 > エッセイ第14回
プロフィール
おしゃべり散歩道
イベント情報
出演予定
執筆活動
リンク集

おしゃべり散歩道2001

「休み」に入った裕子さんと

 「休みます!」と、キッパリ言って区切りのレース(11月・東京国際)を走り終えた有森裕子さん。あの一言には、すがすがしい決意を感じました。それから暫くして日本に滞在中の裕子さんと再会。少しふっくらしたかと思えば、相変わらず細い!
 「太りたくないですもの」とニッコリ話す表情が柔らかでした。そして、「東京のレースで新しい発見がありましたよ」と、彼女の大きな目に力が。エッ、何? 「今回(レース前のケガで)充分な走り込みができず、その分上体を強化しようとウエートトレーニングをしたのです。結果、(レース中は)『ここまでもつんだなぁ』という感じ」。裕子さんは、もともと上体が強かったのでその強化はおろそかにしていたそうです。「でも、海外の選手の中にはリディア・シモンさん(シドニー五輪・銀メダリスト)のように上体で引っぱる選手が多い。これからウエートトレーニングは必要ですね」と。その表情は、「まだまだやれそうな…」という少し未練を残しているような様子。数年後ママさんランナーで活躍する裕子さんに会えるかもしれない! そんな気が強くしました。
 ところで、彼女の話し方には、いつも相手が聞き入ってしまう魅力があります。なので、指導者も合っているのでは? と尋ねると、「あまりそのつもりはないけれど、疑問や壁にぶつかっている人がいて、私に何か聞きたいということであれば何でも……」と。既に、メールで多くの選手達と会話をしているようです。特にどういうことを伝えているかと聞けば、「技術的なことよりも、何かをするにあたって大事なモチベーションだとか、それが完全に生き方につながるということかしら」と。
 この日も、私は生徒になった気持ちで引きこまれてしまいました。一つ大きな仕事を終えて、今、ゆっくりと自分に向き合っている裕子さんの静かな優しさが印象的でした。

(共同通信)

2002年の総合目次へ 【2001年の総合目次へ】 前のエッセイを読む


Copyright (C)2001-2021 Kiwaki-Office. All Rights Reserved.
サイト内の画像・文章等の転載・二次利用を禁じます。