女子マラソンに新しい波
七夕の日に行われた札幌国際ハーフマラソン。きら星のごとく光った選手は、21歳の高仲未来恵さん(京セラ)でした。
彼女は、女子マラソンの女王、キャサリン・ヌデレパ選手(ケニア)を後ろに従え、18キロ付近までトップ。最後はキャサリン選手にスパートされたものの、堂々の2位でゴールしました。女王の胸を一度も借りようとはしないレースぶりは圧巻!の一言に尽きます。
事前取材でも、最後が上り坂の厳しいコースに対し、ただ一人「楽なコースです」と毅然(きぜん)と話す姿が印象的でした。
さて、こういうりりしい選手の後ろには、優れた指導者がいるものです。京セラチーム(京都)を教えるのは大森国男監督(57)。実業団チームを率いる前は埼玉栄高で監督をされ、女子チームをインターハイ女子総合12連覇へ導いた人です。
実業団に移った理由を聞いてみると「世界的なマラソンランナーを作りたかったからです」と言って目を輝かせました。そのためにはまず、ハーフで実績を上げることが大切だと考えているようです。
京セラ女子陸上部が鹿児島から京都に移って3年目のことし。成果は早くも表れ、3月に山口で行われた全日本実業団ハーフマラソンでは、京セラ勢が2−4位を占めたのです。
何が指導の原動力になっているのでしょう? 監督は笑って「僕は負けず嫌いなんですかねえ」。
中学校の陸上部の指導で実績を残し、埼玉栄高へ移られたのですが、多くの高校の監督から「中学と高校の陸上の指導は違う」と言われたそうです。高校レベルでは通用しないと言わんばかりに…。
「中学の指導者を代表するつもりで成功しなければ、と思いましたね」。実業団監督となった今も、埼玉栄高のときと同様の意気込みが伝わってきます。
選手が勝負どころ、誰もが苦しい中で、抜きんでるか否かは、どこで決まるのかと尋ねました。監督は「生活の中で、自らが作り上げる厳しさを持てるかどうかですよ」と静かに答えるのでした。女子マラソン界に、また新しい波が押し寄せそうです。
(共同通信/2002年7月19日配信)
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