レース条件の考慮必要−マラソンの代表選考−
8月にパリで開催される世界陸上の日本マラソン代表(男女とも5人、補欠1人)が先日、決まりました。選考のあった理事会では、始まる前から「今回はすんなりいくね」という声が圧倒的でした。というのも、男女ともに選考基準となった日本の3大会で日本人トップが標準記録をクリアし、残りの2枚の切符は「記録」で選ばれるとふんでいたからです。実際にそうなりました。
ただ、名古屋国際女子を現地で見ていたわたしは「この風がどれだけ考慮されるだろう」と思わずにはいられませんでした。報道されたのは「5メートル」の風でも、沿道に立つと、バランスを保つのが大変で、それ以上の強さを感じました。同時に、選考する方は、オートバイに乗ってでも同じ風を感じないと理解できないと思ったのです。
レース後、陸連の沢木啓祐強化委員長に伺いました。「どのくらい(記録を)割り引いて考えたらいいのでしょう」と。すると、沢木委員長は「選手の持つ筋力の強さによって違う。(この風の中でも5キロごとの)記録のロスが少なかった選手は評価できます」と答えられました。
選手の中で一番、記録が安定していたのは、3位に入ったボガチェワ(キルギス)選手です。それでも彼女は「今まで33回、マラソンを走っているけど、こんなに(風に)足を取られて進めなかったのは初めて」。
来年のアテネ五輪も今までと選考基準は変わりません。今回のことでますます「走る条件を統一化しないと、平等な選考はできない」と強く思いました。
この選考基準が続くなら、選手は、どの大会を選ぶか、かなり慎重にならなければいけません。そして、陸連がこの選考方法を押し通すなら、レース前に詳細な情報(走る選手の顔触れや気象予報のチェックなど)を与えるべきでしょう。
(共同通信/2003年3月21日配信)
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