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おしゃべり散歩道2003

華麗なランナー ポーラ・ラドクリフ−世界最高の走りを見て−

 先日のロンドンマラソン。世界最高記録(2時間15分25秒)を樹立したポーラ・ラドクリフさん(英国)の走りはあまりにも衝撃的でした。イギリスBBCのスタジオから中継。解説の私は興奮して座っていることができなくなり、ずっと立ったままのコメント。こんなのって初めてです。
 何が凄いかって、ゴールタイムはもちろん42.195キロの刻み方。これまで、いずれかの5キロ区間を15分台で走れた選手は誰も居ません。それなのに彼女はピストルが鳴るやいなや最初の5キロを15分48秒!「エッ〜」、私は手元の時計を疑いました。更に後半の30〜35キロを15分58秒、35〜40キロを15分55秒と、またもや15分台。結局3回も初の15分台を出したのです。
 そして、最後の7.195キロの力強さといったら、「『全身の力を振り絞る』とはこういうことなのよ」と教えられた感じです。日本選手の場合、後半、体が揺れ始めると疲れた証拠で、実際、タイムも落ちている場合が多いのです。ところが、ラドクリフさんは、首を縦に揺らし腕や上半身を大きくうねらせながら、どんどんスピードを上げていく。全身の力を振り絞りながら沸いてくる更なるスピードがあるのが怖い位です。
 レース後のパーティー。彼女はシルクのノースリーブにパンタロン姿で現れました。笑みを絶やさない口元が上品で、聡明な雰囲気が漂います。携帯電話(の写メール)を手に、「一緒に写真を撮らせて下さい」と私がお願いしたら「よろこんで」と、ニッコリ。膝を折り、私の身長にグーンと腰を下げて合わせてくれました。そして、「日本では電話にもカメラがついているのね」と面白がられて、三枚も撮ったのです。大切な「宝物」になりました。また今、ゆっくり写真を眺めながら、「走るセリーヌ・ディオン」のような彼女を思い出しています。

(共同通信/2003年4月19日配信)

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