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おしゃべり散歩道2003

ケガ治り心底「やる気」−弘山さん復活の予感

 この夏、弘山晴美さん(34)=資生堂=が、またブレークしそうです。春の陸上サーキット女子1万メートルでは、静岡国際で日本人トップの4位。仙台で行われた東日本実業団対抗選手権でも、女子1500メートル、5000メートルで優勝するなど、彼女の力強くてしなやかな走りを包むピンクのユニホームがキラキラ輝いて見えました。
 弘山さんは、元女子1500メートルの日本チャンピオンですが、最近はマラソンが中心。もちろん、アテネ五輪はマラソンでチャレンジします。そんな彼女が今、世界のマラソン「スピード化」に対応しようと自ら積極的に中距離レースに出場し、若い選手たちをグイグイ引っ張って勝つ。何と勇気のあることでしょう。
 スタンドには「ヒロインが帰って来てくれた」というような熱いまなざしで見つめる観客が多くいました。誰もが弘山さんの深い表情に彼女の歴史を重ね合わせることができるからでしょう。シドニー五輪はマラソン代表の切符を手にできず、五輪後はケガや貧血に泣き、トップ集団を走れないことも。「弘山はもう終わった」という声すら聞こえてきました。
 今は、6日の日本選手権(女子1万メートル)に向け、長野県菅平で合宿中。同じ場所で合宿する第一生命の山下佐知子監督は「弘山さんは腹がすわっている。うちの選手にもハッパをかけてます」と、彼女の練習に向かう意気込みと、内容に感服しているようです。
 ご主人の勉さんは「春からようやく『心』と『体』が一緒になって心底『やる気』になってきた」と、安心したように話します。長引いたケガが治り、いよいよ「時満ちて」という感じのようです。でも、こんな今を迎えられるのは、彼女が、いいときも悪いときも、くじけることなく同じように努力の日々を重ねてきたからだと思います。さまざまな経験とともに熟成期を迎えた弘山さんのこれからが楽しみです。

(共同通信/2003年6月3日配信)

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