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おしゃべり散歩道2003

歯を食いしばって湧く「力」

 先日、『人生、噛みしめていますか?』というテーマで、NHKラジオに出演しました。「噛む」ことを強くすると、「食いしばる」ことになります。そして「歯を食いしばる!」という言葉は、スポーツの世界で、非常によく使われているのです。
 さて、番組前に私はQちゃん(高橋尚子)の監督、小出義雄さんに電話取材をしました。「マラソン選手は、『ここ一番』の時、歯を食いしばりますよね」と、自信満々に伺うと…。「増田さ〜ん、(レース中)選手が歯を食いしばってたら舌かんで死んじゃうよォ。ボクは毎日、歯を食いしばっているけどね。ハッハッハァ〜」と、笑われてしまったのです。小出さんの話しによると、選手はスパートする時、ほっぺの肉を緩めている。そうでないと力を発揮できない。「Qちゃんだって、(マラソンの)後半は口が半開きになっているでしょう」と。
 そういえば…。”私も選手時代、調子が悪い時ほど、歯を食いしばっていたなぁ”と、思い出しました。
 ところが、元体操選手の森末慎二さん(ロス五輪鉄棒・金メダリスト)は、反対のことを言うのです。「技の前は、『ウゥッ』と、歯を食いしばったね。だって、字懸垂は、口開けてたらできないよ。だから僕の歯は、奥歯も前歯もボロボロだった」と。なるほど!種目によって違うのでしょうか?体操選手や空手、ウエイトリフティングのように瞬時に力を入れる種目は、瞬時に歯を食いしばっているようです。
 番組には、「主人が突然、亡くなり、泣くまいと、歯を食いしばって生きています」というファックスも届き、胸が一杯になりました。人生、スポーツにおいても、人は、負けないワ!がんばろう!と前向きに思う時に、自然に歯を食いしばるのでしょう。強く、奥歯をかんで生きる力を湧かせているのかもしれません。

(共同通信/2003年6月27日配信)

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