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おしゃべり散歩道2003

スポーツ、芸術の接点

 「スポーツと芸術には接点があります。一緒に勉強しましょう」と大阪芸術大の理事長さんに声をかけていただいたのが4年前。それから今まで、学生から多くのことを教えてもらっています。
 スポーツと芸術はどちらも「表現する」という点では共通し、「肉体」を、「作品」を作り上げる過程で精神が研ぎ澄まされていく感覚を得たときが、良い結果につながっているようです。
 そして先日、ある男子学生が「走り高跳びの選手が跳んでいる際に見える空は、その人だけの空だと思う」と話し、わたしは体が震えるほど感動しました。あの緊張とスピード、開放感の中で見える特別な空。それは、その人だけの感覚で、わたしは何だか選手時代が懐かしく思えてきたのです。きっと、マラソン選手が時速20キロで走っている時に見える景色や聞こえる音も特別なはずです。
 選手のころ、わたしはスタート前のピストル音を待つ40分間、極度の緊張から空気の味が変わりました。あのヨーグルトと白ワインを混ぜたような甘酸っぱい味。今はどんなに緊張しても味わうことができません。
 また、面白いことに、学生たちが挙げる好きなスポーツ選手は「フォームが美しい選手」なのです。例えば、今、大リーグで活躍している松井秀喜選手とイチロー選手。圧倒的にイチロー選手の方が人気が高く、「身をこなす姿が美しい」と言います。
 そういえば、紀元前の古代ギリシャで、誕生したオリンピックは、初めは男だけの大会で、全裸でした。その鍛え抜かれた肉体美を彫刻家たちが「理想美」として残したときから、スポーツと芸術は共通のものだったのかもしれません。

(共同通信/2003年7月18日配信)

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