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おしゃべり散歩道2003

女子マラソン高速時代

 来年はアテネ五輪。オリンピックが故郷に帰る。世界の女子マラソン高速時代を築いた選手たちの集結の舞台ともなるだろう。
 2001年秋、世界で初めて2時間20分の壁をベルリンで破った高橋尚子選手はいま31歳。その高橋選手の記録を一週間後のシカゴでキャサリン・ヌデレバ選手(ケニア)があっさりと更新した。彼女も31歳だ。そして今春、ロンドンで英国のポーラ・ラドクリフ選手(29)が2時間15分25秒という、昨年の福岡国際だったら8位に入る男子並みのスピードで圧勝した。年齢も近いこの3人がいま、抜きんでる存在として注目されている。2時間21分を切った女子はいまのところこの3人しかいないのだ。
 だが、私が一番「怖い」と思うのは、リディア・シモン選手(29)=ルーマニア=だ。ベスト記録は2時間22分台と3人には遠いが、勝負強さはナンバーワンだと思う。
 2000年の大阪国際。彼女は前を行く弘山晴美選手を40キロ地点でとらえた。そのとき、彼女の肩から腕、胸の筋肉が浮き上がり、私は移動車のなかから”最後の最後にきてさらに生まれる筋肉がある”すごさに唇が震えた。そして、シドニー五輪での追い上げだ。「あと400メートルあったら高橋は負けてたよ」と小出義雄監督が舌を巻いたほどの底力だったのだ。
 そんなシモン選手に先日、札幌国際ハーフマラソンで再会した。昨年12月23日に長男クリスティアンちゃんを出産してわずか半年後のレース。13位という結果には満足の様子で、アテネ五輪への「確かな一歩」に見えた。3600グラムの大きな赤ちゃんだったため出産は陣痛から24時間かかったそうだ。「マラソンの苦しみに勝るものはないと思っていたけど『辛さ』ではそれ以上だったわ」とシモン選手。いままで以上に「勝ちたい!」と思うのは「クリスティアンに勝つ姿を見せたいから」と言う。母となって復帰したシモン選手は手ごわい。

(産経新聞/2003年7月22日掲載)

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