瞬間積み重ねる楽しさ
世の中には、「信じられない」と思うことをひょうひょうとやってのける人がいます。先日お会いした関家良一さんはまさに、そんな人でした。彼は、昨年3月に台湾で行われた、24時間走り続け、走行距離を競う「24時間走アジア選手権」で、アジア記録となる266.275キロで優勝。半年後の9月にもギリシャの「スパルタスロン」で、245.3キロを23時間47分54秒の”日本記録”で制覇したのです。
さぞかし、鉄人を思わせる、近寄りがたい人かと思えば…。実際にお会いしてみると、明るくてひょうきんな方でした。彼の身長183センチに驚くわたしに「足は32センチですよ!」とオチャメなしぐさで右足をポイッと投げ出すなんて。
それにしても、24時間寝ずに起きていることもできないわたし。どうしたら24時間もの間、走り続けていられるのか? 不思議でなりません。率直な思いをぶつけると、関家さんは言いました。「1周を約2分ペースで走る。24時間、そのこと以外考えていないから楽しいんですよ」
この大会はほとんど400メートルトラックで行われるそうです。彼は600周以上もの間、1周ごとのタイムをよみながら、走り続けることが楽しいというのです。それに、「体調がいいときは、全然眠くならず、おなかもすかない。昨年は5分も休まなかった」と言うからびっくりです。
関家さんは「自分で作れる24時間」を楽しんでいらっしゃる! 瞬間、瞬間を積み重ねる楽しさ、集中している面白さを。それは走り続けられる体力、脚筋力を持つ者にとっては、自然に溶け込み対話する時間なのかもしれません。
10月中旬、彼はオランダで行われる「24時間走世界選手権」に出場します。記録でみると現在2位。優勝の可能性もあります。のほほんとした最長距離ランナー、関家さんの活躍が楽しみです。
(共同通信/2003年9月23日配信)
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