増田明美のホームページ ビデオメッセージへ各種お問い合わせへトップページへ

TOP > おしゃべり散歩道 > 2003年目次 > エッセイ第38回
プロフィール
おしゃべり散歩道
イベント情報
出演予定
執筆活動
リンク集

おしゃべり散歩道2003

なんば歩きブーム

 近ごろ、「なんば歩き」という言葉をよく耳にします。野球やバスケットボール、陸上競技とさまざまなスポーツの現場で活躍する選手たちが取り入れている「身のこなし方」です。
 夏の世界陸上パリ大会。末続慎吾選手(メダル)が、男子二百メートルで銅メダルに輝き、短距離種目で日本初のメダルをもたらしました。彼が、「なんば走法」のタイミングをとりいれていたことは有名な話です。
 「なんば歩き」とは、右手右足、左手左足を同時に前へ出す歩き方のことを言います。実はこの歩き方を、わたしは5年も前に永六輔さんから教えていただいていました。皇居の周りを一緒に歩きながら永さんは、「江戸時代まで日本人は、右手右足、左手左足歩行だったのですよ。今のような歩き方になったのは、明治の初期、米国から軍楽隊(行進)が入ってきてからです」と。不思議がるわたしに歌舞伎の弁慶が飛び六方を踏む姿や、宅配便を飛脚の絵を例に話してくださったのです。
 「小学校の運動会の行進で、たまに緊張して、日本人古来の歩行をする子どもがいるでしょう。あれは正しい日本人の歩き方なので、笑ってはいけません」と。そして、わたしたちは「遺伝子を呼び起こしましょう」と、その歩行をしてみたのです。何だか変な感覚でした。まさか、その「なんば歩き」がこんなにブームになるなんて…。
 つまり、この動きだと「体をひねらない」ので軸がしっかりし、余分な力を使わない無駄のない動きができるわけです。水の上を走っているような、スマートな末次選手のフォームを見るたびに、永さんと歩いた、ちょっぴり恥ずかしい姿の皇居のウオーキングを思い出します。

(共同通信/2003年12月10日配信)

次のエッセイを読む 【2003年の総合目次へ】 前のエッセイを読む


Copyright (C)2001-2021 Kiwaki-Office. All Rights Reserved.
サイト内の画像・文章等の転載・二次利用を禁じます。