新タイプのヒロイン
男子選手のようなスポーツ刈りに、花の冠がよく似合った原裕美子さん(京セラ)。13日の名古屋国際女子マラソン優勝後の記者会見でのことです。目がパッチリ、人形のようにかわいいのにレースは大胆。初マラソンながら、キャリアもスピードもある大島めぐみさん(2位)を38キロ地点で引き離しました。
そんな強気な走りはどこから生まれてくるのでしょう。一人の記者が尋ねると「名誉会長から頂いた”絶対苦しいときがくる、でも気持ち次第でどうにでもなる”という言葉が力になりました」と真っすぐな瞳で話すのでした。以前取材したときも原さんはよく名誉会長の言葉を引用しました。名誉会長とは一代で京セラを築き上げた稲盛和夫さんのことです。
京セラチームは去年12月の全日本実業団女子駅伝(2位)の前にも稲盛さんの講話を45分間聞いたそうです。「原はずっとメモを取っていました」と陸上部フロントの小林一憲さん。今回名古屋へ出発する前、稲盛さんは原さんと小林清美さん(5位)を呼んで10分間講話をしました。「うまくいくはずは。明るく走りなさい」と。ビジネスマンの中にも稲盛ファンは多いと聞きますが、あらためて人の持つ力を引き出す言葉のパワーを感じずにはいられません。
ところで原さんに「その髪形はスポーツ刈りと言っていいの?」と聞くと「はい。中国でも日本でも切りました。短いと余計なことを考えなくていいんです」。そんな彼女を大森国男監督は「素直で”信じる心”が強い。思い込んだらとことん究めるタイプで、走る以外に余計なことをしたくないという集中力がすごい」と評価しています。
精神面の鍛錬を大切にする原さんは、かつて「修行僧」といわれた瀬古利彦さんに似ているようにも思われますが、話すと飛び切り明るく無邪気。やっぱり現代っ子。春の雪が舞った名古屋で新しいタイプのヒロインが誕生しました。
(共同通信/2005年3月16日配信)
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