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おしゃべり散歩道2006

若い選手を見守る監督

 小さいながらもどっしりと立つ小倉城を背に、選手達はスタート。青空に伸びる冬木が彼女達に声援を送っているように見えました。第17回選抜女子駅伝北九州大会。この大会の面白さは、高校、大学、実業団のトップクラスのチームが同じコース(大学・実業団の5区11.7kmを高校生は二人で)で競い合うことです。今シーズン高校日本一の興譲館、大学日本一の名城大、全日本実業団2位の天満屋、3位の沖電気とそうそうたる顔ぶれの中、一際目立った選手は1区須磨学園の小林祐梨子さん(2年生)です。スタートからポーンと飛び出し、実業団選手の追随を許しません。それどころか2位に18秒の差をつけたすきを渡しました。私は移動車から小林さんの走りを見て興奮せずにはいられませんでした。ひざが上げるバネのある走りのなんと美しくダイナミックだったことでしょう。また大きな瞳がこの駅伝の遥か先の遠くを見つめているような感じを受けました。
 彼女は3000、5000mの高校記録保持者。そして「今年は800mの高校記録も破りたいです」と瞳を輝かせます。指導する長谷川重夫監督に伺うと、「成績も良く、特に数学が得意で将来は数学の先生になりたいと言っているんですよ」と。指導者も認める文武両道のお手本のような選手のようです。
 まだ2年生。このような逸材を監督はどのように見守っているのでしょう。「彼女の中距離のスピードを伸ばしていくためには、特別な環境が必要ですね」。監督は五輪で日本選手が大きな壁と思っているトラックの5000、10000mで世界に通用する選手になって欲しいと考えています。実業団に入れば駅伝も大事ではあるが、それに酷使され過ぎない環境を作ってあげられることを願っているようです。3年間で巣立っていく選手を長い目で見守る監督の深い心を知りました。

(共同通信/2006年1月23日配信)

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