スポーツ文化を育む
飛行機は雄渾な阿蘇山を眼下に熊本空港に着陸しました。「元気にしとらしたですかー」と出迎えの声も威勢よく、私の気持ちはどんどん高揚していくのでした。第35回RKK女子駅伝競走大会にゲストとしてお招きを受け、「KKウイング」と呼ばれる競技場へ。“KK”はマラソンの父「金栗四三」の頭文字だと聞き、襟を正したくなるような気持ちになりました。
競技場の賑やかさは、まるで動く春の花畑のよう。中学生から大人まで全部で262チームが集い、真剣に走るチームもあれば、社会人チームの中には「花よりだんご」「亀よりまし」など職場の仲間たちと和気あいあいと参加しているチームも。スタンドに目をやると、職場の応援団やお父さんが子どもと一緒にお母さんを応援する姿が多く見られました。皆、スポーツ祭りを楽しんでいたのです。
昭和47年、わずか9チームで始まったこの大会、女子の駅伝としては日本で一番長い歴史を持っています。日本人初のオリンピック選手としてストックホルム大会に出場し、生涯にわたってスポーツの振興と発展に寄与した金栗四三さんの「女子を強くしたい」という思いからスタートしたそうです。熊本から松野明美さんや川上優子さんなどの日本を代表する名ランナーが生まれ、現在も阿蘇品照美さんが新星として注目されているのは、こんな土壌によるものでしょう。
また、昭和48年には「遅いあなたが主役です」というキャッチフレーズのもと、天草パールラインマラソンが始まりました。この健康マラソンの草分け的な大会の創設者は医師の加地正隆さん。金栗さんと加地さんが中心に作った「熊本走ろう会」は全国の走ろう会の中心的な存在になったのです。
こうしたリーダーの存在と、スポーツを通して豊かな気持ちが育まれることを知る市民の理解で、熊本はスポーツ文化が花開いていると感じました。
(共同通信/2006年2月13日配信)
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