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おしゃべり散歩道2006

素直に気持ちを表現

 雪や氷の白い舞台で戦い、自分を表現するアスリートたち。ついつい深夜までトリノ五輪をテレビ観戦してしまう日々が続いています。スノーボード・ハーフハイプで予選落ちしてしまった成田童夢選手は、目に涙をいっぱい溜めて「悔しいです」と。自分の気持ちを素直に出している姿に清々しさを感じています。
 私は20歳の時にロサンゼルス五輪に出場しましたが、途中棄権し、レース後、泣きながら「すみません」と言いました。当時の私は、周りの目や評価を気にし過ぎ、あれが自分の気持ちだったのかといえば、「?」との思いも。だからこそ今回のトリノ五輪の選手達の素直な気持ちの表現には、心地よさを感じずにはいられません。
 五輪は選手達にとってだけでなく、支えるスタッフ、伝えるメディア、観客にとっても“4年に一度”の大舞台です。その一瞬を見逃すまいとする空気で会場は独特な渦に包まれます。そんな大舞台で頑張る選手達と同じくらい清々しさを感じたのが、スピードスケートの堀井学さんの解説です。
 堀井さんはリレハンメル五輪500mで銅メダルを獲った素晴らしいアスリートですが、その後2回の五輪では結果が出ず、私は堀井さんに「悩みながらもまじめに黙々と自分の世界で修行をする」という印象を持ち、悲愴感さえも感じていたのです。
 しかし、今回の解説で私の堀井さんに対する印象が変わりました。選手の身になって丁寧に話す穏やかな語り口、心優しいコメント。時には選手を応援し、時には叱咤激励する。自分自身の体験も活かされているのでしょう。いろんなものを深く考え的確に捉えている言葉のすべてが、とても爽やかで清々しいのです。
 五輪の大舞台で自分のやってきたことを精一杯発揮し、表現しようとする選手達。そんな後輩達を優しく見守りながら解説する堀井さん。まだまだ寝不足の日々は続きそうです。

(共同通信/2006年2月20日配信)

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