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おしゃべり散歩道2006

88ヶ所ウォーキング

 春色の景色に包まれた3月下旬、高松港から小豆島へ。穏やかな陽気に瀬戸内海は、“春の海ひねもすのたりのたりかな”という蕪村の句を思い出させるようでした。ただ、ここで生活するお年よりは静かな海とは対照的に活発です。それを代表するかのように船内に96歳のおばあちゃんのポスターが。太陽の光を栄養にしてきたような、農作業するおばあちゃんの笑顔が小豆島の元気を象徴していたのです。
 さて、港に着くとさっそく大森さんの運転する車で観光へ。78歳の大森さんは毎年伺う私を飽きさせないように、いつも違う場所を案内してくれます。今回は農村歌舞伎小屋や千枚田など。神社の境内にある、かや葺屋根の歌舞伎小屋まで駐車場から長い階段を下りました。かなり急な階段に私がのたのたしていると、大森さんは笑いながら「テンポよく歩かにゃいかんよ」と。見学が終わるとスタスタを軽やかに上っていったのです。その健脚には目を見張るばかりです。
 そしてこの日のコースの中には小豆島88ヶ所巡りのお寺も2ヶ所。駐車場でバスを降り、急な階段や山道を登っていくお遍路さんたちにお逢いしました。私の前を歩く大森さんは皆さんに元気良く声をかけます。聞けば「埼玉からです」「神戸から来ました」と。私は気付かれないようにそぉーっと歩いていたのですが、大森さんがわざわざお遍路さん達に「皆さん、かの有名なマラソンの増田明美さんですよ」と朗らかに紹介するので、皆さんに囲まれ、話が弾み笑いに包まれました。
 先人の知恵なのでしょうか。バスでも2泊か3泊かかるこの88ヶ所巡り。心の健康はもちろんのこと、脚も鍛える、まるで小豆島の豊かな自然の中でのウォーキング大会です。歩く人、笑う人の元気が長寿につながるとしみじみ感じながら、長い階段を息を切らしながら上りました。

(共同通信/2006年3月27日配信)

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