噴火型 スポーツ振興
皇居のお堀を右手に、満開の桜を眺めながらゆっくりと歩いて赤坂へ。3月29日、笹川スポーツ財団の主催でスポーツセミナーが開かれました。“日本のスポーツを考える”というタイトルで3時間。それは私にとって目からウロコが剥がれ落ちるような話題の連続でした。
「日本のスポーツ振興を“強化、普及、環境”を柱に考えていきましょう」と進行は原田宗彦さん(早稲田大学教授)。パネリストは岡野俊一郎さん(国際オリンピック委員会委員)、小野清子さん(笹川スポーツ財団会長)、荻原健司さん(参議院議員)と豪華な顔ぶれです。すぐに岡野さんが「強化と普及は分けて考えるべき、一緒には出来ません」と。会場にいたおよそ200人の聴衆は一瞬息を呑むような感じでした。一般的には競技の“裾野が広がって頂点が高くなる”というピラミッド型を考えますが、岡野さんは、荒川静香さんやWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の例を挙げながら「山頂が噴火して溶岩が流れ落ちて裾野が広がるのです」と話したからです。キーワードは噴火型。「僕はノルディックスキーの盛んな長野や東北の生まれだと思われるが、群馬県草津の生まれです。小学生の頃、冬季国体が群馬で開催され、地域の人たちが一生懸命盛り上げようとする情熱がすごかった。その勢いの中でスキーを本格的にやり始めた」と環境について話す荻原さん。「トップを多く作るためにはいい組織、いい指導者が必要です。噴火させる指導者の存在が大きい」と、小野さんはスポーツ組織力と指導者育成の重要性を熱く語ったのです。
小中学校の教育現場にまでコンピューターが導入され、仲間とともに汗をかく機会がどんどん減っている子供たち。スポーツ振興が子供たちの健全な成長の一助になると確信している私は、いいお話に心躍らせ、夜桜を眺めながら家路につきました。
(共同通信/2006年4月3日配信)
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