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おしゃべり散歩道2006

森さん がんに負けるな

 憲法記念日の静岡・草薙総合運動場。春霞の遠くに富士山の裾野がちらりと見えました。例年のように静岡国際陸上を取材で訪れた私は、お昼過ぎ「皆さんにお伝えしたいことがあります」という突然の場内アナウンスに耳を傾けました。アテネ五輪日本代表の為末大さん(400mハードル)と、池田久美子さん(走り幅跳)がスタジアム中央から観客席に呼びかけています。「アテネ五輪砲丸投げ代表の森千夏選手が今、虫垂がんという病気と闘っています。余命宣告を受けていますが、諦めることなく闘っています。闘い抜くための1回の治療費が十数万円かかります。陸上競技を愛する多くの皆さんからのご支援をお願い致します」為末さんのその言葉は、森さんを応援しようという想いに溢れ、一瞬場内は息を呑むような静けさの後、大きな拍手に包まれました。隣で池田さんも「私は“森ちゃん”と呼んでいます。生活の全てを砲丸投にかけた森ちゃんと、五輪で2人でメダルを獲ろうねと励まし合ってきました」と、涙を堪えるように話すのでした。
 森さんの恩師、東京高校の小林隆雄先生も会場にいらっしゃいました。私がお話を伺いに行くと、先生はアテネ五輪前から体調が優れなかった森さんが検査の結果、虫垂がんだと分かったのが2005年7月だったこと。告知を受けた森さんが「闘っていくしかないですね。どんな辛い治療でも受けます。北京五輪は選手で行けなかったらサポート役でも行きたい」と言ったことを話して下さったのです。
 どこの大会で会ってもいつも向日葵のような大きな笑顔で挨拶をしてくれた森さんを思い出します。4月3日に退院し、現在自宅療養中。100sあった体重は69sに減ったそうです。「調子が良い時は“先生、たこ焼きが食べたい”って言うんですよ。早く好きなものを食べさせてやりたい」と小林先生。がんばれ、森さん!
 募金:郵便振替、00140−5−411666「森千夏を応援する会」

(共同通信/2006年5月8日配信)

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