夢中になれる環境作り
京都、鴨川の水面に近づくように並ぶ川床。夏の風物詩です。先日、「教育セミナー関西2006」のシンポジウムにお招きを受けました。テーマは「つくる」教育を求めて。熱い古都で、堀場雅夫さん(堀場製作所最高顧問)、荒瀬克己さん(京都市立堀川高校長)たちと熱い議論を楽しみました。
82歳の堀場さんは白髪をオシャレに後ろで束ね、打合せ中から元気一杯。日本の教育について語りたいことが溢れている様子でした。本番では“ものづくり”について「大学生一人と幼稚園生百人が綱引きをすると、幼稚園生が勝つ。これが20世紀の競争“集団の時代”だった。しかし21世紀は競争が綱引きから難しい数式に変わり、大学生が勝つ“個の時代”になった」と話し、得意なものをとことんやる教育の大切さを強調。また、エデュケーション(教育)の語源・“エデュース”は“教える”ではなく“引き出す”という意味であることも。
隣で私は興味深く聞きながら、“選手を育てる”ことで実績のある2人の監督のことを話さずにはいられなくなりました。女子マラソン五輪金メダリストを育てた小出義雄さん(佐倉アスリート倶楽部)と藤田信之さん(シスメックス)です。小出さんは褒めて伸ばす人。「いいね、いいね、最高」が口癖。藤田さんはめったに褒めず、逆に選手が奮起するように仕向けます。タイプは違っても選手の能力を最大限に引き出す手腕の素晴らしさを紹介しました。
「木は光を受け何年もかけて育ちます。子供達も毎日言葉を受けて育ちます」と荒瀬さん。物理や数学の世界的な大会で入賞者を出している堀川高校の校長先生が“言葉”の大切さを熱く語ったのです。
人づくり、ものづくりのプロに共通していたのは、児童・生徒が何かに“夢中に取り組む環境”を大事にしていること。熱い議論の後、京都に吹く風が爽やかに感じられました。
(共同通信/2006年7月31日配信)
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