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おしゃべり散歩道2006

千葉さんのタスキ、吉田さんへ

 鳥が羽を広げるように青空に両手を伸ばし、笑顔でゴールイン。8月26日、千葉真子さん(豊田自動織機)が北海道マラソンで競技生活にピリオドを打ちました。ゴール後、たくさんの報道陣に囲まれた千葉さん。強い陽射しを避けることなく対応する姿は神々しく見えました。
 レース前、「ラストランの理由は今は話しません。張り詰めた気持ちが解けてしまいそうだから」と話していただけに、皆、千葉さんのゴール後の言葉を待っていました。すると静かに口を開き、持病の恥骨からくる右足全体の痛みのことを打ち明けたのです。一人で痛みを抱え、ゴールまでたどり着けないかもしれない不安と戦いながら走った42.195qは長かったことでしょう。「ゴール出来なければ次のステージにも行けないと思いました」と話す千葉さん。最後は独力でトレーニングを重ねてきた強い意志を持つ人なので、次のステージではさらに輝きを増すことでしょう。
 そして、偉大な先輩の意思を受け継ぐような積極的レースをし、初マラソンで優勝したのが吉田香織さん(資生堂)。少女マンガから飛び出してきたような可憐な選手です。レース前日、「カーボ(炭水化物の摂取を調整する)もうまくいき、歩いていても体が軽いんです」とニコニコした表情で話す天真爛漫さ。吉田さんは埼玉県の名門進学校川越女子高校を卒業し、小出義雄さんのスカウトを受け、五輪出場を目標に積水化学へ。その後資生堂に移籍。話していてもとても知性的な選手です。また30度を超える暑さの中、38qあたりから足の動きが鈍くなりながらも、給水で水を手渡してくれる方に軽くおじぎをする姿がとても微笑ましかったです。
 日本女子長距離界を引っ張ってきた千葉さんから襷を引き継ぐように、吉田さんのマラソンがこれから花開いていきそうです。

(共同通信/2006年8月28日配信)

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