実体験で道徳心学ぶ
安部新内閣は教育改革を政策の柱にしています。中央教育審議会でも義務教育における学習指導要領を見直そうと頻繁に会議が行われています。先日は「道徳」の教科がテーマ。日常生活で見る規範意識の乏しい青少年についての例が多く出され、道徳教育の重要性が議論されました。そしてその改善策として道徳、特別活動、総合的な学習の時間の分担と連携について話し合ったのです。
私はこれまでに小学校訪問を通して低学年の道徳の授業を見る機会に恵まれました。その授業は教科書に紹介された物語や童話作家金子みすずさんの作品を元に、先生が“思いやりの心”や“自然を慈しむ心”“いじめはいけない”ことなどを熱く語り、子ども達に問いかける素晴らしいものでした。こんな経験から、低学年の時には教室の中で道徳心を学び、高学年になったら学校外での体験を通して身に付けて欲しいと思っています。
そんな折りしも、10月1日、青森県弘前市で開かれた弘前・白神アップルマラソンにご招待を受け、津軽路を走りました。秋風に触れながら岩木山を臨み、赤く色付きはじめたりんご畑の脇を通る情緒的なコース。私が走った10qコースでは6qの給水所で小学生が机に並べた紙コップに急いで水を注いだり、水を含んだスポンジをランナー達に手渡していました。中には道路に散乱した紙コップやスポンジを黙々と拾い集める子も。ランナー達は渡される冷たい水を飲みながら「ありがとう」、スポンジを子どもの持つゴミ袋に入れながら「ありがとう」と声をかけていました。そう言われた小学生は照れながらも嬉しそうでした。
ゴールで赤く実ったりんごをランナー一人一人に手渡す子どもを見ながら、こうした体験こそ、人に喜ばれることを肌で感じ、これからも人が喜ぶことをしようとする行為につながっていくのだろうなと感じました。
(共同通信/2006年10月2日配信)
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