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おしゃべり散歩道2006

強さを試されるマラソン

 冬めく空気の中、力強い着地に落ち葉が舞い上がりました。国際千葉駅伝を控えて、世界14ヶ国から集まった選手達が、千葉県長柄町にある日本エアロビクスセンターで調整を行ったのです。銀杏や杉の黄葉が白い息を吐きながら走る選手たちを暖かく包み込んでいるようでした。
 ロビーでは空手の演武が披露され、地元の子どもたちが厚い板をパンッ、パンッと割る姿に選手達は大喜び。キャサリン・ヌデレバさん(ケニア)はブロックを素手で割るシーンに目を覆う仕草を見せました。「痛くないの」と私に尋ねるので、「割れる時は痛くないらしい。割れない時が痛いんですって」と、私は師範に聞いたことを伝えたのです。
 大会当日は圧倒的な強さで優勝したケニアチームですが。原動力はやはり4区のエース区間を走ったヌデレバさんでした(区間1位)。風格のある走りは年々強さを増していくように見えます。大会前に私は“34歳”という年齢について彼女に尋ねました。なぜなら、先日の東京国際女子マラソンを走った高橋尚子さんと同年齢で、高橋さんの年齢を気にする声が多く聞こえていたからです。ヌデレバさんは「私の中で限界はまだ感じていないわ。選手生命は神様が決めている。毎日一生懸命走って、ダメなら次の人生を一生懸命進めばいい」と平然と話したのです。“コントロールできないことは気にしない”という姿勢こそが、彼女が長く世界の第一線で活躍できる秘訣ではないかと感じました。
 ロサンゼルス五輪男子マラソンで優勝したカルロス・ロペスさん(ポーランド)は37歳でした。谷口浩美さんも36歳でアトランタ五輪に出場しているし、今年3月の名古屋国際では弘山晴美さんが37歳で初めてマラソンで優勝。マラソンは長く走り続けて得た経験が活かされます。肉体的な若さやスピードだけでなく、“人としての強さ”が試されるからでしょう。

(共同通信/2006年11月27日配信)

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