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おしゃべり散歩道2007

納得できない柔道の選考

 何ともスッキリしない選考です。柔道の世界選手権(リオデジャネイロ・9月)の代表選考会を兼ねた、全日本選抜体重別選手権。女子48キロ級で優勝した福見友子選手が選ばれず、谷亮子選手が世界選手権の代表に。私は男子と女子の選考結果の違いを感じます。全日本柔道連盟の選考基準は、最近一年間の国内外での実績を評価するものです。男子でも優勝できなかった3選手が選ばれていますが、彼らは最近の国際大会で活躍した実績を持っています。
 一方の女子。この基準に基づくと、当然選ばれるのは福見さんです。今大会の優勝も含め、昨年末の福岡国際女子で、アテネ五輪銀メダリストを下して優勝しています。谷さんは、五輪で2回の金メダルと2回の銀メダルという輝かしい実績がありますが、選考基準にある“過去1年間”という期間には、あてはまりません。出産、育児という大仕事もあり、柔道の実績が728日間ないのです。報道によると、連盟の強化委員長は「(谷さんは)長年どんな状況でも勝ってきた。福見よりメダルに近い」と説明しています。きっと勝負勘を取り戻すことが大変だった今回よりも、世界柔道で、という期待があるのでしょう。しかし、それならば何のための選考基準なのでしょうか!
 選手は選考基準に沿って目標を絞り、日々精進し、世界選手権を、五輪を目指します。それなのに、選考基準に沿った結果を出した人が、選ばれないとなると、福見さんに限らず“選ばれる”選手達は、“選ぶ人”へ不信感を持つでしょう。何のために競技に打ち込んでいるのかさえ、分からなくなる。若い芽を潰してしまいます。
 今回の問題は、柔道に限らず、来年五輪を控え、マラソンなど様々な競技にもいえることです。主役は選手。基準を明確にして、選手達が迷うことなく、努力し結果を出せば報われる選考方法を確立しなければいけません。

(共同通信/2007年4月9日配信)

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