若手を信じて任せる
広島市西部の新井口駅で坂口泰さん(中国電力陸上部監督)と待ち合わせ。1月上旬、坂口さんの義兄が経営するオタフクソースの「お好み焼館」で新年会が開かれました。目の前の大きな鉄板を囲み話しに花が咲く中、広島のお好み焼きが原爆と関わりを持つことを知りました。被爆した広島はアメリカからメリケン粉が他の地域よりも多く援助され、加えて軍港などの施設も近かったため鉄板が手に入りやすかった。戦争で夫を亡くした人々が生活のために自宅の軒先でお好み焼き店を始めたのです。「○○ちゃん」という名のお店が多いのは、お客さんが女将さんの名前を愛称で呼んだからだそうです。
この日、鉄板の前に立ったシェフはオタフクソースの「お好み焼課」の社員。技能テストなどをクリアした社内資格を持つ職人さんです。30代前半でしたが、義兄の佐々木茂喜さんは若い従業員に自由な発想でメニューを考えさせ、どんどん発表させます。この日もシェフは私のことを事前に調べ、実家でみかんを作っていることから、デザートはみかんソースたっぷり。
指導といえば坂口さんもまた、次世代の選手を育てようと気迫に満ちています。元日の全日本実業団駅伝で中国電力は6位入賞。チームの平均年齢が25.5歳という若さでした。これまでチームは全国で2度優勝をしていますが、今回はその時の戦力だったマラソン日本代表の選手達をあえて外したのです。
「若手を信じて任せてみることが大事ですよ」と佐々木さん。「そうそう、責任は上が取ればいいんですから」と坂口さん。お互いの世界は違っても、刺激し合い、それが指導や経営に活かされるのだと感じた味わい深い夜でした。
(共同通信/2011年1月17日配信)
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