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おしゃべり散歩道2011

温かさに包まれた初優勝

 1月30日の大阪国際女子マラソン、朝から大阪には強風注意報が出され、気温3℃という寒さのなか強い風を受けて走る選手達が気の毒になりました。そんな悪条件を克服して優勝したのは赤羽有紀子さんです。昨年のこのレースは、左でん部の痛みにより39km手前で途中棄権。それでもレース後に開かれた招待選手懇親会に夫でコーチの周平さんと共に参加。他チームの監督たちにマラソンについて熱心に聞く姿が印象的でした。
 今年は同じ懇親会で監督たちから「よかったね」「強かったよ」と祝福され、二人の大きな笑顔には様々な葛藤を乗り越えた強さが感じられました。レース前、「今回はコースに応援に出ずに、競技場でゴールを待っていてね」と有紀子さんから言われた周平さん。有紀子さんには一人で戦場に向かう自信があったのでしょう。周平さんは競技場内でテレビを観ながら有紀子さんを見守りました。でも、20km過ぎにペースメーカーのスピードが落ち、有紀子さんが前に出たくてたまらない仕草を見せた時、「いくな、我慢しろ」と念じていたそうです。私が「その時は沿道に出たくなったんじゃないですか」と尋ねると「うーん」と考えた後、「でも信じてましたよ」とにっこり。4歳になった娘の優苗ちゃんは17qと30km地点の2か所で応援してくれたそうです。沿道から「ママー」という大きな声が聞こえ、「風もあり、序盤のペースは速いなと感じたので、娘の声と笑顔で体が楽になりました」と有紀子さん。
 家族で支え合っての競技生活。一人で凛々しく戦場へ向かえるのも、大きな愛に見守られているからこそ。マラソン初優勝は温かさに包まれ、冬の寒さを吹き飛ばすものでした。

(共同通信/2011年1月31日配信)

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