世界に通じるスピードを
立春を過ぎ、太陽から引っ張られるようにふきのとうが芽吹き始めた頃、永六輔さんのラジオ番組「土曜ワイド」に出演しました。永さんはいつもその時々の話題について、ズバズバ聞いてきます。今回は放送が始まるといきなり「ペースメーカーって何ですか」と。1月下旬に開催された大阪国際女子マラソンをテレビでご覧になっていたようです。大阪では女性のペースメーカーが3人。うち2人が日本人で1人がハンガリー人でした。実は、日本人が国際大会でペースメーカーを務めるのは初めてのこと。「先頭の選手を応援してたら途中でやめちゃうからビックリしました」と永さん。ペースメーカーが普通のユニフォーム姿だったので選手との区別が付きにくかったようです。ベルリンマラソンなどではペースメーカーがお揃いの白いシャツに黒いパンツ、胸には「ペース」と大きく書かれています。永さんは「黒装束で走ってもらい、やめる時には一礼すれば分かるのに」と話しました。いつも新鮮な視点にハッとさせられます。
ところで、ペースメーカーの存在意義について。五輪などではペースメーカーがつきません。それなのに日本で行われる国際大会でペースメーカーに引っ張ってもらうのは「お膳立てされている」ようだとの声もあります。しかし今回のように、世界選手権の選考を兼ねた大会では、勝負にこだわるあまり、ゆっくりとしたペースでレースが進みがちです。それでは世界のスピードに太刀打ちできません。ペースメーカーが刻む速いペースに付いていくことでスピードを磨き、国際舞台に立った時には勝負に徹する。このやり方でロンドン五輪メダル獲得に向かっています。
(共同通信/2011年2月7日配信)
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