福島出身の侍ランナー
雪を被った富士山を太陽が「春ですよ、春ですよ」とノックしているような暖かな日。第36回静岡駿府マラソンが開催されました。私は毎年ゲストで伺っていますが、今年もう一人のゲストランナーが藤田敦史さんとあり、何となく会場に良い緊張感が漂いました。2000年の福岡国際マラソンを2時間6分台で走った藤田さん。国内での6分台は未だに彼一人です。そして34歳になった今、ロンドン五輪を目指しています。「市民ランナーの皆さんは純粋に走ることを楽しんでいるので、教えられることが多いです」と開会式で藤田さんはキリっとした表情で挨拶。以前、瀬古利彦さんが「我々の時代の真面目さはどこか真面目なフリをしていたけど、この便利な時代の真面目さは本当に真面目だ。藤田君をみているとそう思う」と話したのを思い出しました。
この日藤田さんはハーフを1時間4分46秒で走り圧勝。私はご一緒している時間、色々な質問を。子どもの頃から運動が得意だった?「いや、体育の成績は1か2でした」と意外な答え。「好きだったのが国語で、算数と違い答えの表現が一つではないのが面白かったです」と。また藤田さんをはじめ、佐藤敦之さんや今井正人さん、柏原竜二さんなど福島県出身の長距離選手の活躍について伺いました。「三つ理由があると思います。一つは毎年行われる市町村対抗駅伝という子どもから参加できる舞台の存在。二つめは良い長距離の指導者が多いこと。そして雪国に住む人の我慢強い気質です」と。雪の中で春を待つ辛抱強さが泥臭いマラソン練習に向いていると話すのでした。インテリジェンスな侍を思わせる藤田さん、ロンドン五輪を決めて欲しいと思いました。
(共同通信/2011年3月7日配信)
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