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おしゃべり散歩道2011

韓国の人々の支援に涙

 4月上旬、新羅千年の古都と呼ばれる慶州で「慶州さくらマラソン&ウオーク」が開催されました。慶州の20万本の桜、昨年は蕾でしたが、今年は咲いているだろうか?
 ワクワクしながら釜山の空港に降り立つと、入国審査の前に長い列。何やら日本からの旅客だけがゲートをくぐらされています。そこに“放射線検査”と。並んでいた日本人同士で顔を見合わせ「大げさね」と苦笑い。そのことを迎えに来てくれた現地通訳の方に話すと「昨日は雨が降りましたから幼稚園が休みになりました。放射能の雨が心配で」と真剣な顔で話したのです。韓国内での報道が過剰になっていることを知り、嫌な気分になりました。ただ、そんな気持ちが和らいだのは前夜祭です。慶州の桜は三分咲き。日本からの約1000名の参加者を前に、慶州市長さんが「震災で大変な時にようこそおいで下さいました。日本と韓国の熱い友情で明日までに桜の蕾はもっと開くでしょう」と御挨拶。その後、日本の代表者に義援金を贈呈して下さったのです。それから伝統芸能の舞台が始まり、扇子踊りに太鼓や笛の演奏。そして、琴を弾きながら5名の女性が「さくらさくら」と「ソーラン節」を丁寧に歌ってくれました。私ですら二番の歌詞はなかなか出てこないのに、韓国の方々がそれを覚えて心を込めて歌う姿が応援歌のようで、涙がこみ上げました。周りを見ると私と同じように泣いている人ばかり。
 翌日、「退職した後に目標を持って人生を生きたい」と思って走り始めたという60歳の男性に会いました。「被災地の復興を願いながら、私も一歩一歩ゴールを目指します」と話す姿に、私の踏みしめる足にも力が入りました。

(共同通信/2011年4月11日配信)

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