劇的な復活、絹川さん
埼玉県熊谷市で行われた日本陸上競技選手権。日本の元気を体いっぱいに表すように、最終日の女子5000mで劇的な復活を遂げたのは絹川愛さん(ミズノ)です。3000mまで新谷仁美さん(千葉陸協)がハイペースで飛ばし、それに最大で20m遅れて追随した絹川さんは残り2周で新谷さんを捉え、優勝。ラスト1000mは2分54秒。レース後「絹川は1000m一本だけ走っても3分を切ることはないのに、レースとなると自然とスピードが上がる」と渡辺高夫コーチも満面の笑みでした。渡辺さんは仙台育英高校時代から絹川さんを指導。彼女の魅力は、「賢さとバランスの良いフォーム」だと話します。体軸がしっかりしているので腰高で走れ、そのお蔭でレースで加速した時に体重移動が速やかに行われるそうです。美しいランニングフォームはこれか走る距離を伸ばす程に活かされるでしょう。
彼女は高校生の時から10000mで大阪世界選手権に出場するなどの逸材でした。しかし、注目されるストレスから精神不安を起こし、レース中にもめまいを起こしたことも。インタビューで見せる明るさとは裏腹に繊細な性格です。子どもの頃にヒップホップダンスを習っていたので着地が柔らかく、その持ち味を渡辺さんと共に大事にしてきました。硬いアスファルトを走ると走りが変わってしまうので、練習の中心を芝生の上を走るクロスカントリーに。先日、高校の先輩であるワンジルさん(北京五輪マラソン金メダリスト)が不慮の事故で死亡。ワンジルさんから渡辺さんへ電話があると、必ず絹川さんにかわり、最後は「がんばろうね」と励まし合ったそうです。絹川さんは今、ワンジルさんの分までがんばろうとしています。
(共同通信/2011年6月13日配信)
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