市民マラソンへの警鐘
夏のコーラス隊、蝉に交じり虫の音が聞こえ始めた夕方、月刊誌ランナーズ編集長の下条由紀子さんにお会いしました。下条さんの話によると、昨年度フルマラソンを完走した人の数は全国で約19万人。一昨年度が16万人弱で、ちなみに30年程前は3万人位ではなかったかとのこと。2012年2月に開催される東京マラソンの募集も8月1日に始まりましたが、初日で定員3万6000人を超える応募。今年は10月に大阪マラソン、11月に神戸、来年春には熊本、京都で大型市民マラソンが続々とスタートし、市民マラソン熱は全国へ波及しています。
ただ「昔と比べ制限時間が長くなり、初心者が増えることで弊害も出始めています」と下条さん。マラソン大会中に救急搬送された人の中には、軽い心臓疾患を持っているのにそれに気付かずに走っていた人もいたそうです。また、前夜の睡眠不足や深酒などから体調を壊す人も。話を伺いながら、制限時間が緩やかになり多くの人がマラソンに参加できるようになったのは喜ばしいことですが、反面、緊張感が薄れる怖さも感じました。
日本で初めて五輪(1912年ストックホルム)にマラソン代表で参加されたのは金栗四三さん。マラソンの父と言われる金栗さんは、42.195kmを語呂合わせで「死に行く覚悟」と言いました。確かに軽い気持ちでこの距離は走れません。私は少なくとも半年間の準備期間を作って欲しいと思います。まずウオーキングで脚づくりをし、ゆっくり長く走る練習に移行。本番前までに少なくとも2時間半止まらずにゆっくりでも走る練習をしなければいけません。しっかり準備してこそ、ゴール後、本当の達成感を味わうことが出来るのです。
(共同通信/2011年8月22日配信)
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