レースの主導権握れず
テグ世界陸上競技選手権の初日、女子マラソンはケニアが表彰台を独占。日本は6年ぶりにメダルを逃しました。世界全体がレベルアップしたこともありますが「レースの主導権」を握れなかったことに原因はあると思います。まるでジョギングのようなペースで始まったレース。大きな集団の中で日本代表の5選手はいい位置に。しかし32キロ過ぎの給水所からのケニア選手たちの急激なペースアップに、あっという間に離されてしまったのです。レース後、22位の伊藤舞さんは「給水の度にペースが上がるので、スパートかと思い何度もドキドキしました」と。相手に動かされるレースは精神的に消耗します。
“たら、れば”になりますが、前回のベルリン大会の尾崎好美さんの銀メダルも含め、これまで日本が結果を残せたレース展開は、序盤からある程度速いペースでレースが進み、徐々に先頭集団が絞られるようなサバイバルレース。今回、序盤のスローペースの中から日本選手が先に仕掛けることが出来なかったのかと悔やまれます。それでも赤羽さんの5位入賞の追い上げは素晴らしく、現在の世界の層の厚さからするとメダルに匹敵する成績だと思います。
今回代表の尾崎さんと野尻あずささんの2選手を指導している山下佐知子さんは「半年間も積み上げてきてこの結果は辛いですよ。でもこれも天の配剤、また国内選考で頑張ります」と明るく話してくれました。ロンドン五輪の選考レースは11月の横浜、1月の大阪、3月の名古屋。山下さんは秋の駅伝との両立が大変だと言いながらも「指導者としてのメンタルが試される時」と強い眼差し。テグの結果はロンドン五輪へ必要なものだったに違いありません。
(共同通信/2011年8月29日配信)
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