為末さんの現役続行宣言
韓国・テグで開催された世界陸上選手権、9日間にわたる熱戦を締めくくったのは男子4×100mリレー。世界新記録でジャマイカチームのウサイン・ボルト選手がゴールに飛び込みました。解説を終えて部屋に戻った朝原宣治さんが「ボルトは8秒台でいったんちゃいますか」と言えば、「遠慮がちにスタートしたからバトンパスがちょっと詰まったな」と伊東浩司さん。「アメリカの転倒に巻き込まれた国は気の毒ですね」と為末大さんも話に加わります。期間中、解説者やアナウンサーが資料作りや出番前に集まる控室は、解説者のまたその解説が聞ける貴重な空間でした。
放送終了後の打ち上げで、テレビ局のプロデューサーは「世界陸上は運動会の最終形だと思っています。リレーなんかまさに子どもの頃の運動会を思い出すでしょ」と少年の様な笑顔。改めて陸上競技を愛する人たちが力を合わせて世界中の選手に敬意を払いながら中継しているのだと感じました。その席で、まだ現役選手の為末さん(今回はテレビ中継のゲスト)は「世界陸上はこんなにすごい大会なんですね。選手として参加していると中継は15人位でやっているのかと思っていました」と。100名以上のスタッフからは大きな笑いと拍手が。為末さんの穏やかで知的な話し方は伝える側にもむいていると思いますが、本人は「来年のロンドンまでがんばります」と現役続行を宣言。より大きな拍手が起こったのです。
打ち上げが終わり控室に戻った解説陣。「そろそろまじめに練習始めろよ」と朝原さんは為末さんの肩を叩き、伊東さんは黙って握手。大会が終わり、窓の外ではそれぞれの道へ戻る侍たちを薄紫の百日紅が見送っていました。
(共同通信/2011年9月5日配信)
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