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おしゃべり散歩道2011

名アナウンサーにプロの凄み

 戻ってきた残暑に赤トンボも木蔭で羽を休める午後、大阪芸術大学で私が担当するメディアスポーツ論にゲスト講師として馬場鉄志さんが来てくださいました。馬場さんは元・関西テレビのアナウンサーで、スポーツ実況ではその名を知らない人がいないほど。F1、サッカー、マラソン、特に競馬の実況が人気で、彼の名調子と共にレースを覚えている競馬ファンも多いでしょう。この日、過去の桜花賞のVTRを観た学生が「番号が見えないのにどうやって馬の名前が言えるんですか」と質問すると、「騎手の勝負服の色を全部覚えているんですよ」と馬場さん。またレースがスタートした直後、なめらかな口調の早口で馬の名前を全部言っていることに感動した学生に「学生時代、私は北海道の牧場でアルバイトしていましたが、育てた人は手塩にかけた馬の名前が全く呼ばれないと悲しいと思うのです」と答えました。
 出席している学生たちの専攻は放送、映像、舞台芸術、芸術計画等々。学生たちにとってこのような現場の話を聞くことは貴重な体験だったよう。身を乗り出して聴く人もいました。また馬場さんはスポーツ実況に情緒を加えるために読んでいるという本を紹介。それは様々な雲の名前や花の名前、日本の色など図鑑のような本で、私自身も大変勉強になりました。そして「オランダの光」というドキュメンタリーをDVDで観た後、「奈良の光と大阪の光はどう違うのか」と問題意識を持って生活することの大切さを伝えたのです。
 スポーツ中継では選手が主役ですが、実況のアナウンサーの言葉によってレースに彩りが加わります。プロの凄味を感じながら、秋のスポーツ中継が楽しみになりました。

(共同通信/2011年9月16日配信)

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