増田明美のホームページ ビデオメッセージへ各種お問い合わせへトップページへ

TOP > おしゃべり散歩道 > 2011年目次 > エッセイ第44回
プロフィール
おしゃべり散歩道
イベント情報
出演予定
執筆活動
リンク集

おしゃべり散歩道2011

山下監督の巧みな采配

 旧中山道を彩った様々な色のユニフォーム。文化の日に行われた第22回東日本実業団女子駅伝は、選手達の足音が路面の落ち葉を舞い上がらせる勢いでした。中でも黄色と黒のユニフォームがお馴染みの第一生命、アンカー尾崎好美さんの走りは圧巻でした。トップの積水化学と33秒差(約160m差)の2位でたすきを受け取るとじわりじわりと差を詰め、競技場に入る時には12秒差。6.3kmの区間、最後の200mをかみそりのようなスパートでかわし、優勝のゴールテープを切ったのです。
 尾崎さんは今夏の世界陸上選手権テグ大会ではメダルを獲ることが出来ず、落ち込んでいました。更にその後、熊本・阿蘇の合宿中に監督の山下佐知子さんから「少しは自分で考えなさい」「私がしっかりみてあげられるのは横浜(国際女子マラソン)までだからね」と厳しいことを言われたのです。おとなしい尾崎さんの性格に火が付いたのでしょう。ロンドン五輪の選考レースとなる11月20日の横浜国際女子マラソンの走りが楽しみです。
 ところで、人を育てる名伯楽には様々なタイプがいます。有森裕子さんや高橋尚子さんらを育てた小出義雄さんのように「いいね、最高」と褒めて伸ばすタイプ。野口みずきさんを育てた藤田信之さんのような叱咤激励型。山下さんは年齢は若い(私と変わらず40代)のですが、選手にとって怖いお母さんになったり、優しいお姉さんになったり、時には友達になったりと自由に変身します。しかも知的で緻密。私が冗談で「これから更年期障害を経験するのかな」と言うと、真剣な表情で「情熱が薄れたり、判断力が鈍るのが怖い」と。来年のロンドン五輪に向けて、山下さんの采配が光りそうです。

(共同通信/2011年11月7日配信)

次のエッセイを読む 【2011年の総合目次へ】 前のエッセイを読む


Copyright (C)2001-2021 Kiwaki-Office. All Rights Reserved.
サイト内の画像・文章等の転載・二次利用を禁じます。