家族への感謝を込め
オリンピックの選考レースとなると選手たちの気迫がより漲ります。11月20日に行われた横浜国際女子マラソンは壮絶なレースでした。気温24度を超える中のサバイバルレース。32キロ過ぎからマーラ・ヤマウチさん(英国)、尾崎好美さん(第一生命)、木崎良子さん(ダイハツ)の3人の争いに。残り3キロで木崎さんがペースを上げると、それに尾崎さんが追従し2人のマッチレースとなりました。そして残り2キロで今度は尾崎さんが一気にスパート。すると木崎さんは20mほど離されてしまいましたが残り1キロで追いつき、そのまま更にペースを上げて尾崎さんを振り切り山下公園のゴールへ飛び込んだのです。レース後「残り2キロではもう負けたかと思いましたよ」と監督の林清司さんもいうほど。負けた尾崎さんも勝負を仕掛けたという点で素晴らしかったと思います。
木崎さんの優勝の原動力は感謝の気持ちだと強く感じました。「ロンドンに両親を連れていきたかった」とレース後涙ぐんだ木崎さん。アキレス腱をはじめ多くの故障で苦しんだ時いつも支えてくれたのは家族でした。木崎さんのお父さんは箱根駅伝を4年連続走った名ランナー。お母さんも元陸上中距離選手。そんな両親に育てられ、お姉さんお兄さんと一緒に保育園の頃から走っていましたが、反抗期もあり中学時代はバスケットボール部に所属。しかし、お兄さんが事故で目に障害を受け家族が落ち込んでいる時、「家族が一つになるためにも」と陸上競技に打ち込むことを決心したそうです。
優勝記者会見を待つ木崎さんの横で携帯電話に出たお父さん。「大変なことになっちゃたよ」と。その目には薄っすらと涙が滲んでいました。
(共同通信/2011年11月21日配信)
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