復興への足音
日本三景・松島から杜の都・仙台へ。奥の細道松尾芭蕉が辿った道を選手たちはさかのぼりました。第31回全日本実業団女子駅伝は今年から舞台を宮城県に移して開催。冬日和に照らされた島々の何と美しかったことでしょう。大震災から9カ月での開催は地元の皆さんによる懸命な復旧作業のおかげで、各チームの監督や選手たちは大会前から「本当にありがたいです」と感謝の気持ちを語っていました。
1区から6区まで一度もトップを譲ることなく完全優勝したのは第一生命です。私は第一移動中継車から解説しましたが、ユニフォームの黄色が金色に見えるほどの躍動感でした。1区の尾崎好美さんの気迫が2区以降に勢いをつけたようです。1区は峠を越えるような急こう配が連続するコース。そんな地形をもろともせず尾崎さんは力強い走りでトップでたすきを渡したのです。横浜国際女子マラソンで優勝を逃した尾崎さんが「ショックでふぬけになるかと思ったら、すぐに立ち直ってくれた」とレース前に監督の山下佐知子さん。やはりチームのエースがどんな状況であっても諦めずに前へ進むことが全体の気迫を高めていくのだと感じます。
レース後、山下さん自身「あんなに走れるなんて驚きましたよ。今回は選手にあれこれ言うことはなく、選手自らが動いてくれた」と。2002年に優勝して以来、なかなか勝てないことについて、強い選手が何人もいるのに勝てないのは自分のせいだと責めていたことを思い出します。そして今回、山下さんは「いいチームワークを醸し出すようになるには時間がかかる」としみじみ話すのでした。
村井嘉浩知事のもと、一歩一歩着実に復興へ進む宮城県に元気な足音が響きました。
(共同通信/2011年12月19日配信)
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