岡山から新ヒロイン
大阪城内の梅林で寒紅、冬至が花を咲かせる1月29日、大阪国際女子マラソンを制したのは重友梨佐さん(24歳・天満屋)でした。2回目のマラソンで26km過ぎから一人旅。たまにみせる不安な表情を移動中継車の中から見つめ、世界に通用するかどうか、天から与えられた試練のようにも感じました。重友さんは孤独に耐えながら後半それほどペースを落とすことなく走り続け、2時間23分23秒で優勝。「後半は福士加代子さんが主導権を取ると思っていたので、予想外の展開でした。まさか勝つとは思っていなかった」と武冨豊監督も嬉し涙を堪え切れません。
練習でも“耐える力”の強い選手のようです。右足の股関節が痛くても、それを監督に話さずに2時間以上走ったこともありました。そして良い結果を出した後は真っ先に感謝の気持ちを述べる人。そんな重友さんの性格を育んだのはお母さんの民惠さんです。梨佐さんが故障で走れず愚痴をこぼすと母は「陸上競技をやらせて頂いていることに感謝をしなさい」と話すそうです。この言葉が重友さんの原点なのです。派手さはありませんが遠い目標に向かってコツコツと地道に積み上げていく人。その性格はマラソン向きだと感じます。特技がケン玉というところにも、一つのことに集中力を発揮できる素養があるのでしょう。
すでに次の課題も見えているよう。今回の35キロ以降のペースダウンに対して「スタミナ不足。クロスカントリー練習を入念に行い、次の目標に向かいたい」と監督も重友さんも声を揃えます。シドニー、アテネ、北京とこれまで3大会連続で五輪マラソン代表選手を輩出している天満屋から、寒紅を思わせる新しい花がまた咲きました。
(共同通信/2012年1月30日配信)
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