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おしゃべり散歩道2012

独自のスタイルを貫くランナー

 東京マラソンのスタート地点で瀬古利彦さんに会い、レース予想を尋ねると「川内君が2時間7分台と言い過ぎているのが気になるね」と話しました。瀬古さんは、勝負に徹して結果としてタイムが付いてくることが理想だと。確かにこの日の川内さんは前半から上半身に力が入り過ぎていました。5キロ、10キロの給水所で自らのドリンクが取れなかったのも精神的なダメージを与えたと思います。
 14位でゴールした後「後悔はしていません。五輪には選ばれないと思う」と潔く話した川内さん。しかし、私は12月の福岡国際マラソンで彼が日本人トップとなった(2時間9分57秒)ことを高く評価すべきだと思います。東京を走ったのは9分台の記録では世界と戦えないという自己への厳しさから。常にベターではなくベストを目指す川内さんです。福岡、東京、びわ湖と舞台が違う大会では気象や高低差など条件が全て違うわけで、各大会で“勝った者”が選ばれるべきです。
 今回日本人トップの2位に入ったのが藤原新さん。彼は自らいばらの道を選びました。2年前に所属していたJR東日本を退社。プロランナーの道を選んだものの、スポンサーからの契約金が支払われず貯金を取り崩しながらの競技生活。藤原さんと食事をした私の友人は、彼の切り詰めた生活ぶりを聞き、お米を送りました。今回、レース終盤の苦しい時に藤原さんは「ロンドン、BMW、賞金」と頭の中で唱えながら走ったそうです。
 今注目される市民ランナーの川内さんとプロランナーの藤原さんに共通しているのは「マラソンで成功したい」という強い思い。そのために自分に相応しい環境を築き、独自のスタイルを貫き通しています。

(共同通信/2012年2月27日配信)

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