女性アスリートと恋愛
春のお日様に桜の蕾が大きく膨らんだ頃、Qちゃん(高橋尚子さん)が「マラソンに例えると、今40km地点です」と交際を宣言。お相手は元トレーナーで、現在はマネージャーとして彼女を支えている西村孔さんです。西村さんは優しく紳士的な人。いつも一歩引いてQちゃんを見守っています。私はテレビ中継の解説でよく二人とご一緒しますが、スタッフとの食事会でも西村さんは大皿の料理を取り分けたり、飲み物のオーダーを取ったりと細やかに気配りをされるのです。
さて、女性アスリートと恋愛について。日本では陸上長距離選手の殆どが実業団に所属し、寮で共同生活を行っています。しかも1年のうち何度か酸素の薄い高地で1〜2カ月の合宿を行うため、恋愛をすることは難しいです。でも海外では事情が違います。1984年のロサンゼルス五輪女子マラソンの銀メダリスト、グレテ・ワイツさんは既婚者でした。北京五輪では金、銀メダリストが共にママさんランナー。夫がコーチとして二人三脚で歩む人も少なくありません。日本でもお馴染みのリディア・シモンさんは五輪の合間に結婚、出産を経て、ロンドンで5回連続の五輪出場を狙っています。
日本では弘山晴美さん(資生堂)が結婚して第一線で活躍し続ける道を切り拓きました。それに土佐礼子さんが続き、ママさんランナーとしては赤羽有紀子さん(ホクレン)が第一人者と言ってよいでしょう。これは所属する企業と指導者の理解の賜物。女性として自然に歩む人生の中に競技があるというのが理想だと思います。女性アスリートが夫や恋人の支えを受けて頑張れる環境は心強いもの。その形が増えれば日本はより強くなるでしょう。
(共同通信/2012年3月19日配信)
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