ロンドンで最高の力を
ギリシャの古代オリンピックで紀元前から行われていたというやり投げ種目。今、この種目が大変盛り上がっています。日本選手権で12年間トップを守り続けてきたのは村上幸史さん(32歳)。そして先日、村上さんを破って20歳のディーン元気さんが優勝しました。村上さんの表情は悔しさというよりも「よくぞここまで来てくれた」と歓迎しているように見えました。
村上さんを大学時代に指導をされた小山裕三さんに話を伺うと、今年3月に日本陸上競技連盟の沖縄合宿があり、そこでも二人は休み時間や食事中に兄弟のように仲良く話をしていたそうです。これまで世界の舞台で孤軍奮闘してきた村上さんにとって、ディーンさんは敵ではなく良きライバルなのでしょう。どの大会でお会いしてもいつも笑顔の村上さん。「怒った顔は見たことないな」と小山さんも話します。沖縄合宿では村上さんからディーンさんは色々なものを吸収したはずです。
それにしてもディーンさんの潜在能力は計り知れないものだと言います。日本記録は87m60cmですが、「ディーンは90mを投げるような潜在能力を秘めている」と室伏重信さん(ハンマー投げで日本選手権を10連覇した鉄人)が話すほど。また小山さんは、村上さんもディーンさんも「日本の風土の中で育ち鍛えられた」と話します。というのも、共に子ども時代は野球をやっていたからです。野球の才能があったものの、肩の強さをより生かせるようやり投げを専門にやるようになったのです。
「オリンピックでは二人で最高の力を出したい」と村上さん。二人共、ひつじ年のやぎ座生まれ。ロンドンでは狼のような雄叫びを上げて世界と戦うに違いありません。
(共同通信/2012年6月18日配信)
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