高め合い同級生で代表
雲が少しばかり薄化粧になり梅雨の中休みとなった6月24日、岡山県井原市を講演で訪れました。ここは彫刻家、平櫛田中さんの故郷であり、きれいな星空やデニムでも有名な街です。同時に今、ロンドン五輪に向けて大変盛り上がっています。というのも市内には興譲館高校があり、重友梨佐さん(女子マラソン)と新谷仁美さん(女子5000、1万m)の同級生の2人の卒業生がロンドン五輪代表に決まったからです。
井原市に向かう車中、市役所の方が「興譲館の選手たちはすごく礼儀正しいんですよ」と話したので、私も取材の時にいつも丁寧に挨拶をしてくれる選手たちのことを伝えました。そして講演会場に行く前に興譲館に立ち寄ることに。土のグラウンドは、まるで京都竜安寺の石庭のようにブラシをかけた跡がきれい筋を作っていました。心を込めて整備していることが一目で分かり、森政芳寿監督が信条としている“陸上競技を通しての人間教育”の一端をうかがい知ることができたのです。
グラウンド横には2005年と10年に全国高校駅伝を制覇した時の二つの記念碑が立っています。05年の初優勝の時の1区が新谷さん、2区が重友さん。襷渡しをした二人です。その記念碑を眺めながら「はたちの日よきライバルを君に得て自ら当てし鞭いたかりき」という堀口大學さんの歌を思い出しました。新谷さんと重友さんはお互いの頑張りを、自分を奮い立たせる力にしてきたのでしょう。二人のタイプは違います。派手やかで有言実行の新谷さん、黙って堅実に目標に向かう重友さん。よきライバルはお互いの存在を意識し高め合いながら、それぞれの舞台で全力を尽くすことでしょう。
(共同通信/2012年6月25日配信)
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