パラリンピックと五輪
どんよりと曇った空の下では胸に下げられたメダルがひときわ輝いて見えました。9月10日、ロンドンではパラリンピックが閉幕した翌日にオリンピックとパラリンピックのメダリストが一緒にパレードを行ったのです。シティという金融街からバッキンガム宮殿までの約4kmを特設ステージを組んだトレーラー21台で。前日の車椅子マラソンを含め陸上種目で4つ金メダルを獲得したデービッド・ワイヤーさんとオリンピックの七種競技で金メダルを取ったジェシカ・エニスさんが並んで沿道に手を振り、インタビューに応える姿がステキでした。
パラリンピック期間中もたくさんの感動がありました。先ずどの競技場も観客でほぼ満員だったこと。前方の席には小学校低学年と思われる子どもたちの姿。目の前で片腕がない選手が一生懸命走る姿や、両脚がない選手が腕だけで速く泳ぐ姿を見つめていました。「かっこいい!」という声と共に大きな拍手を送る姿に、英国に根付くスポーツ文化の素晴らしさを感じました。
子ども達はどのようにチケットを入手しているのかと現地の方に伺うと「ホスピタリティ・チケット」というものがあるそうです。このチケットは申込みのあった学校に無料で配布されるもの。その学校には事前にオリンピアンやパラリンピアンが訪問し、競技の魅力や観る楽しみ方などを話してくれるそうです。つまり予習してからの観戦。しかも食事や交通費も無料です。その費用は「プレステージ・ホスピタリティ・チケット」という寄付つきの高額チケットで賄われています。この仕組みによって目の肥えた観客で一杯になり、応援の声が選手との一体感を生んでいたのだと感じました。
(共同通信/2012年9月14日配信)
|