チーム支えたお姉さん
全国各地から梅の便りが聞こえた1月20日、第24回選抜女子駅伝北九州大会が開催されました。そこをラストランと決めて、競技生活に幕を閉じたのが天満屋の坂本直子さん(32)です。この日は1区を走り、新人の翁田あかり(18)さんに襷渡し。“これから頼んだよ”という思いが込められた優しい表情でした。大会後、終始笑顔で「満足のいく競技生活でした」と話す坂本さんをお日様がぽかぽかと照らしていたのです。
坂本さんは市民ランナーのお父さんの影響で陸上競技を始めて19年。天満屋入社後マラソンで頭角を現し、03年のパリ世界選手権では4位、翌年のアテネ五輪では7位入賞を果たしました。私が忘れられないのは、アネテの代表を決めた大阪国際女子マラソンです。30kmから35kmまでの5kmを15分47秒で走り優勝。それまでマラソンでそんなスピードの切り替えを見たことがなく、シビれました。
競技者としても輝かしい実績ですが、チームを陰で支えるお姉さん的存在でもあったのです。「明るい性格の坂本がいなくなると、寂しくなるね」と話す武冨豊監督は娘を嫁に送り出すような表情でした。「坂本は頭がいいので何でも出来る」と言いながら、コーチとしての道を勧めたことを教えてくれました。でも別の道を進みたいという彼女の意思を尊重したそうです。
選手は遠くの練習場所へ移動する時は車の中で体を休めるのですが、「坂本はいつも助手席に座り、運転する私が退屈しないように楽しく話し掛けてくれたんですよ」と武冨さん。自分のことよりも人のことを大切にする坂本さんですから、競技生活を離れても周りを笑顔にしながら、パワフルに人生を歩んでいくことでしょう。
(共同通信/2013年1月21日配信)
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