走る仲間に恵まれた
大阪城公園の梅林の多くはまだ蕾。その中で香篆(こうてん)という一際香り高い白い梅が元気に花開いていました。そんなかぐわしさをレースに感じたのは、1月27日の大阪国際女子マラソンです。移動中継車から解説しましたが、集団の中の人情がもたらす香りに胸が熱くなりました。過去二度の大阪で失速し、それでも諦めずに這い上がってきた福士佳代子さんの「三度目の正直」を応援しようというムードが集団に漂っていたのです。最初の5kmの給水所。ボトルを取り損なった福士さんにすぐ隣で渋井さんが「水だよ」と自分のボトルを手渡しました。その後「私のも飲む?」と小崎まりさん。またレース中、沿道にチームメイトを見つけた福士さんが「私、今何位?」と聞いたら、後ろで渋井さんと小アさんが同時に「3位だよっ!」と言ったそうです。そんなやり取りがあったことをレース後に話してくれた福士さんは「本当に走る仲間に恵まれました」とニッコリ。彼女のマラソンはここから始まるのだと思います。そのスタートを応援したのは戦友達でした。
ゴール直前で福士さんをかわし優勝したガメラシュミルコさん(ウクライナ)の後半の強さは、日本選手達にマラソンの怖さを教えてくれたことでしょう。その夜、ガメラさんと食事をしましたが、本人はあまり満足していませんでした。彼女のマラソンはいつも前半より後半が2分位良いタイムなのに、今回は前半の速いペースに付いていき後半ペースを上げきれなかったそうです。「4月のボストンはもっとすごい結果を出すからね」とウインクしたガメラさん。「明日から3日間休養なので一歩も走らないわ」と話す余裕にも怖さを感じました。
(共同通信/2013年1月28日配信)
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