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おしゃべり散歩道2013

試される野性としての力

 4月の初め、夏を思わせる暖かさの日にポーランドから帰国したばかりの山下佐知子さん(第一生命女子陸上部監督)と食事をしました。世界クロスカントリー選手権から帰った山下さんは「ポーランドはマイナス13度、日本選手が振るわなかった理由はそこにあったかな」と。私も最上位が鈴木亜由子さん(名古屋大学)の62位だったことが気になっていたのです。山下さんの話によると「コースは凍結している上に障害物が多く、ケガを恐れて思いっきり走れなかった」。さすがにクロカンは「野性としての力が試される」もの。アップダウンや不整地に加え、そんな怖さも恐れない人が勝利するのでしょう。現代っ子の日本はどんどん世界と差が開いてしまうかもしれません。
 ところで山下さんは今、日本陸上競技連盟の女子中・長距離強化副部長をしています。女性が就くのは歴代初。4月2日に強化委員会があり、彼女は記者の囲み取材で「できるだけ早くマラソンの選考方法を明確にした方が、選手が目標に向かい易い」と話しました。当たり前のことを言ったつもりなのに、それが翌日の新聞紙面を賑わし、びっくりしたようです。それだけマラソン選考への関心は高いのでしょう。
 マラソンで最近気になるのは、世界大会でのコース。この夏に開催されるモスクワの世界選手権でも、川沿いの5kmのコースを4往復します。「大会運営の合理化や応援する人のことを考えれば仕方ないかな」と山下さん。「でもマラソンは旅。原点(ペルシア戦争で勝利したことを王様に伝えるために走った一人のギリシャ兵士の故事)を大切にして欲しい」と私。こんな風に意見をぶつけられる陸上の友は最高です。

(共同通信/2013年4月8日配信)

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