自分流を貫く川内さん
若葉の緑がみずみずしい4月25日、モスクワ世界陸上競技選手権の男女マラソン日本代表が発表になりました。男子が5名、女子3名。ここ最近、日本のマラソンは男子よりも女子が優勢でしたが、今回は反対。男子のほうが内定基準記録に近い選手が多かったのです。中でも川内優輝さん(埼玉県職員)に注目が集まりました。川内さんはマラソン界に革命をもたらした存在です。公務員ランナーで、実業団選手のように練習時間や合宿も自由にならず、指導者もいません。月間の走行距離は実業団選手が1000qほど走るのに対し、約半分です。でもその分、練習の一環として毎週末のようにレースに参加しています。昨年は年間9回もフルマラソンに出場し、今年に入ってからもすでに4回。これまでの常識では年間2〜3回が限度だと言われてきましたが、川内さんは“自分流”を貫いているのです。常識にとらわれないと言えば、彼が行っている登山道を走るトレイルランもそう。実業団でも昔の選手は行っていました。しかし最近は、悪路でのケガを怖れてかやる人が少なくなりました。「僕の非常識は、案外、昔の常識かもしれませんよ」と楽しそうに話す川内さん。以前、「どうしてそんなにたくさん走れるの?」と尋ねたことがあります。その時の答えは「走ることが好き、としか言いようがありませんね」でした。好きこそものの上手なれという言葉がありますが、正にその通りの人だと感じます。川内さんは「私の最終目標はオリンピックでも世界選手権でもなく、世界中のマラソン大会に参加することです」と話します。旅を兼ねた競技生活を楽しんでいるから、良い結果がついてくるのでしょう。
(共同通信/2013年4月26日配信)
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