故障乗り越え、野口さん
若葉が最も美しい季節の仙台市で、母の日に仙台国際ハーフマラソンが開催されました。街は芽吹きの躍動感に溢れ、それに負けない位の躍動感で走ったのは野口みずきさんです。アップダウンのあるコースを1時間10分36秒で優勝。「記録は満足できませんが、勝てたことは自信になります」と野口さんは目を輝かせました。優勝を味わうのは5年ぶりのこと。これから8月のモスクワ世界選手権に向けて米コロラド州・ボルダーとスイスのサンモリッツで高地合宿を行いますが、良い感触をつかめたようです。
ところで野口さんが生活するシスメックスの合宿所は、4月上旬京都から神戸に移転。先日新築の合宿所に伺って、その素晴らしさにびっくりしました。5階建の白い建物に入るとロビーは吹き抜けで洒落たホテルのよう。トレーニング室には豊富な機器が置かれ、お風呂は温泉宿のように広く、選手たちの部屋の中には酸素を低濃度にできる部屋が2つあります。「野口は毎日標高3000mの高地並みの酸素の薄さで寝てますよ」と廣瀬監督。私が「寝ている時もトレーニングだね」と野口さんに言うと、「何にもしてませんよ。毎日爆睡しています」とにっこり。34歳になった野口さんは日々の練習にスポーツ科学を取り入れながら、次の目標に向かっているのです。その目標とは「広瀬さんのマラソン自己ベスト(2時間18分55秒)を破るか、世界大会で優勝してカッコよく終わることです」と野口さん。
北京五輪を直前の故障で欠場し、走れない時期を乗り越えて、再び日の丸を胸に世界と戦います。冬の寒さに耐えながら力を蓄えて、新芽を出した仙台の欅たちが拍手を贈っているようにみえました。
(共同通信/2013年5月13日配信)
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