目指すは世界の舞台
晩夏の北海道マラソンで向日葵のような笑顔を咲かせた選手は、エディオン所属の渡辺裕子さん(25歳)です。マラソン3回目にして世界経験のある赤羽有紀子さんや重友梨佐さんを抑えて優勝しました。笑うとエクボが可愛いあどけない顔で「嬉しいけれど、もっと経験を積んで世界の舞台を目指したいです!」と。151cm39kgと小柄ですが、内側から眩しい光が感じられます。
レース当日、気温が29℃まで上がる中、渡辺さんは帽子にサングラス、首に冷感スカーフを巻き、準備万端。最初から人の胸を借りようなんて考えはさらさらない様子で女子の先頭に立ち、常に主導権を握っていました。本人曰く、子どもの頃から負けず嫌いで「小学生時代は空手をやっていました。男の子に負けなくない気持ちで6年間続けられました」と。お父さんは昔、短距離でインターハイに出場したことある選手。そんな才能も受け継いでいるのでしょう。渡辺さんは中学から陸上競技を始め、広島・西条農業高校時代には高校駅伝で1区を走りました。しかし区間25位。それほど目立つ選手ではありませんでしたが、日本代表経験のある嶋原清子さんらを育てた川越学監督(現・エディオン監督)の指導を受け始めてからメキメキと力をつけてきたのです。「尊敬している選手は嶋原さんです」と渡辺さん。
今年1月の大阪国際女子マラソンでは福士加代子さんに次ぐ3位。でもモスクワ世界選手権の代表には選ばれず。その時、顔に悔しさを滲ませながら「もっと強さを磨きます」とキリリと言ったことを思い出します。彼女が持つ輝きは、3年後のリオデジャネイロ、そして2020年のオリンピックを照らしているように感じます。
(共同通信/2013年8月26日配信)
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