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おしゃべり散歩道2013

牛も見守る心温かな大会

 海の向こうはサハリン。稚内から日本最北端の宗谷岬に立ち寄り、猿払村を訪れました。オホーツク海に面した人口およそ2800人の村は開村90周年。その記念事業として「猿払村フルマラソン100m駅伝」が開催され、ゲストとしてお邪魔したのです。村民が100mずつバトンを繋いで42.195kmを走り、マラソンの世界記録に挑戦しようというもの。前日の夕食会で巽昭村長が「村は、山林と原野が8割で、農地が2割です」と言われるので、「ん?10割になってますけど、住宅地は…」と質問すると「0.3%ほどなので四捨五入すると0%です」と。皆、大笑い。豊かな自然の中で村民の団結力を高めようという大会なのです。
 猿払村は今はホタテの水揚げが日本で1,2を争い潤っていますが、乱獲によりホタテが獲れなくなった時代もあったそうです。しかし、1971年に村の1年分の税収ほどの大金で稚貝を放流する賭けに出ました。当時の漁業組合長が大英断し、村が保証人になることで融資を受けて実現。見事、村は復活したのです。そして今回の駅伝も17年前に終わった企画を復活。
 大会当日「私も五輪の途中棄権からの復活です!」と挨拶すると皆大笑でした。会場には2歳から85歳までの274人の村民が集結。私は北海道のクラブで指導する作田徹さんらとゲストチーム(24人)で対抗。200m〜800mを走りバトンを繋ぎましたが、100mをダッシュする中学生が登場するとあっという間に周回遅れに。場内アナウンスでは「次のランナーは○○ちゃんのお父さんです」「今走っているのは中国からの研修生、○○さんです」と一人一人が丁寧に紹介され、会場は大賑わい。牛も見守る心温かな大会でした。  

(共同通信/2013年9月20日配信)

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