東京はおもてなしコース
押し入れの半袖シャツをまた引っ張り出した10月初旬、ニュース番組の取材で2020年東京オリンピック、パラリンピックのマラソンコースを下見しました。今後変更される可能性はありますが、魅力的なコースです。序盤と終盤は’08年まで行われていた東京国際女子マラソンと同じコース。国立競技場をスタートし、水道橋、皇居、銀座、日本橋を巡り浅草で折り返し、国立競技場へと戻ります。幾度となくドラマが生まれた四谷の上り坂が36キロ過ぎに待ち受けているのです。
ここ数年、世界選手権も五輪も周回コースが主流になっています。その理由の一つが警備やテレビ中継にかかる経費を節約できるから。しかし、マラソンの発祥の歴史からも同じところをグルグル周るのはどうかと思っていました。日本での国際マラソンは福岡や大阪に代表されるように、折り返しコースが主流です。競技場を出発して色々な景色の中を走り、再び競技場に帰ってくる。旅を思わせるのが日本のマラソンなのです。私は1983年に大阪国際で途中棄権をしてしまいました。その翌年、再チャレンジで競技場をスタートしたら、観客席から「増田、帰ってこいよー」と励まされ胸が熱くなったことを思い出します。
これまで五輪のマラソンコースは選手泣かせでした。例えばロンドンでは曲がり角が100カ所以上あったり、アトランタでは路面が傾いていたり。しかし東京のコースは道幅が広く、四谷の坂以外は平坦。透水性のいい路面はきれいで傾きもありません。マンホールの出っ張りなども殆どないので、選手の皆さんは足元を気にすることなくレースに集中できるでしょう。これぞ“おもてなしコース”なのです。
(共同通信/2013年10月11日配信)
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